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OECD Multilingual Summaries

Investing in Climate, Investing in Growth

Summary in Japanese

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10.1787/9789264273528-en

気候への投資、成長への投資

日本語要約

強靭で包摂的、かつ持続可能な成長軌道を達成することは現代の最優先課題のひとつである。世界各国の政府は、成長の再活性化、生活の向上、パリ協定の諸目標にそった緊急の気候変動対策、という3つの重要課題に直面している。本報告書によれば、世界は高排出の未来に閉じ込められるという代償を払わなくても、経済成長を押し上げ、生産性を高め、格差を縮小し得る。肝心なのは成長の質である。

適切な政策とインセンティブ-特に首尾一貫した気候政策と連結した強力な財政・構造改革-を整備すれば、政府は、気候変動のリスクを大幅に削減しつつ、経済、雇用、保健医療面の短期的な恩恵をもたらす成長を創出することができる。このような気候変動と両立させる政策パッケージを導入することで、2050年のGDPを、現在の政策を継続した場合よりもG20諸国平均で最大2.8%高めることができる。気候変動による損害の回避というプラスの影響まで考慮すれば、2050年のGDPに対する正味の効果は、G20の先進国、振興諸国全体で、約5%にまで高まる。

特にインフラは総じて金融危機以前から慢性的な投資不足に苦しんでおり、近代的でスマートかつクリーンなインフラに対する今後10年間の投資は、持続可能な経済成長にとって極めて重要な要因である。本報告書の推計によれば、世界全体の開発需要に応えるには2016~2030年に平均で年間6兆3,000億米ドルのインフラ投資が必要とされる。この同じ期間に年間6,000億米ドルの追加投資を行えば、これらの投資は気候変動に適合するものとなるが、これは、成長、生産性、暮らし良さという観点から得られる短期及び長期の利益を考えれば、比較的小幅な増額だと言える。追加投資のコストは、低排出技術及びインフラから得られる燃料節減により長期的には相殺される可能性が高い。

さらに、現在の財政環境は今すぐに行動を起こす好機にもなっている。低金利により、多くの国は財政的余裕が増えており、余裕がさほどない国でも、経済成長の強化を包摂的で低排出かつ強靭な発展に沿ったものにするため、税と支出の構成を最適化する機会が生じている。気候政策、財政政策、投資政策をうまく連携させれば、公共支出の影響をさらに最大化し、民間投資も活用し得る。

重要な要因となるのは資金である。官民双方の資金を動員して、低排出かつ気候変動に耐性があるインフラ向けの様々な金融商品を活用しなければならない。公的金融機関を(新環境への)移行に適合させる必要があるとともに、金融システム自体も気候変動のリスクを正確に評価し、取り込むための取り組みを強化すべきである。開発銀行及び金融機関-多国間、二国間、一国単独の銀行及び金融機関を問わず-も全て、自身のバランスシートを利用して入手可能な資源を増やすことによってばかりでなく、政策及び能力構築支援などを通じてパートナー諸国におけるグリーンンファイナンスを開発することによっても、この点において極めて重要な役割を果たさなければならない。

各種インセンティブの連携を図るには基本的な気候政策を適正化することが重要である。影響の追跡調査と政策経験の共有に焦点を絞って、非効率な化石燃料助成の改革を加速するとともに、炭素価格制度を拡充する必要がある。公的調達を活用して低排出インフラに投資すれば、先行市場の創設を通じて産業及びビジネスモデルのイノベーションを誘発し得る。

それと同時に、持続可能な成長は包摂的な成長でもあることを認識しなければならない。一貫性のある気候政策及び投資政策と実効的な財政及び構造政策環境・改革は連携して、特に脆弱な地域及び共同体における、影響を被る企業及び世帯の新環境への移行を円滑にしなければならない。社会が化石燃料集約産業の座礁資産や、そうした産業と共存する共同体の座礁を未然に防ごうとすれば、移行計画の早期立案が極めて重要である。

エネルギーの生産及び利用の先にまで視野を広げれば、農業、森林その他の土地利用部門における開発は、経済の他部門において必要とされる転換の迅速化を可能にする。熱帯林その他の生態系の現在の炭素貯蔵量を保護するとともに、炭素吸収源として機能するその能力を可能な場合には強化する必要がある。研究開発を重点的に強化し、エネルギー、産業、輸送からの温室効果ガス排出量を削減・除去し、農産物収量及び作物の耐性を向上させたりする技術的進歩の迅速な導入、普及を図る必要もある。さらに、「負の排出」の大規模利用の実現可能性は、パリ協定の諸目標に沿った大半のシナリオの重要な特徴となっているにもかかわらず、依然として大きな不透明材料である。

最後に、気候リスクを管理する上では国際協調も極めて重要である。2020年以降の排出量削減に対する各国の現在の貢献はパリ協定の気温目標に沿っていないため、早急に強化する必要がある。途上国における対策への支援は、影響を緩和するためばかりでなく、大きな気候課題に直面している国々の耐性や適応能力を高めるためにも、重要となる。パリ協定の気温目標を達成しても、気候影響は増大する。これらのリスクに際して耐性を強化する柔軟かつ前向きな意思決定が必要とされている。持続可能な開発目標及び長期にわたる力強い成長を達成する上では、気候、食料安全保障、生物多様性に関する各目標間の相互依存を管理することが極めて重要となる。

© OECD

本要約はOECDの公式翻訳ではありません。

本要約の転載は、OECDの著作権と原書名を明記することを条件に許可されます。

多言語版要約は、英語とフランス語で発表されたOECD出版物の抄録を 翻訳したものです。

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© OECD (2017), Investing in Climate, Investing in Growth, OECD Publishing.
doi: 10.1787/9789264273528-en

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