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OECD Digital Economy Outlook 2015

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OECDデジタル経済アウトルック2015

日本語要約

デジタル経済は今や世界経済のあらゆる側面に浸透し、銀行、小売り、エネルギー、輸送、教育、出版、メディア、保健医療など様々な部門に影響を及ぼしている。固定、モバイル、放送の各ネットワークが収斂し、デバイスと対象物のつながりが強まることでモノのインターネット(IoT)が形成されるようになり、情報通信技術(ICT)は社会的相互作用や個人的関係のあり方を変えている。

OECD諸国とパートナー諸国はどうすれば、イノベーションと包摂的成長の原動力としてデジタル経済が持つ潜在的可能性を最大化することができるのだろうか。政策当局が考慮すべきデジタル経済における進化と対処すべき新たな課題とは、どのようなものだろうか。

デジタル経済の潜在的可能性はまだ十分に実現されていない

ICT製造業と特にICTサービス業の世界貿易は拡大を続けている。民間研究開発費(BERD)やICT関連特許の最近の増加は、ICT部門がイノベーションにおいて重要な役割を果たしていることを示している。無線ブロードバンド加入者の増加に伴い、ブロードバンド市場は拡大しており、OECD地域では約10億人に達している。それが固定電話利用者の減少を相殺している。通信ネットワークの性能が光ファイバーと4Gの普及により高まっている一方、料金、特にモバイルサービスのそれは下落している。

  • 固定、モバイルとも、ブロードバンド・インフラは、エリアを拡大し、質を高める大きな潜在的可能性を秘めている。固定ブロードバンドの公称スピードを計測するOECDの新たな手法を利用すれば、政府は円滑にIoTに向けた進歩を維持できるようになる。
  • ネットワーク需要の高まりとより多くの周波数資源をモバイル通信に割り当てる必要があることから、固定ネットワークとモバイルネットワークの補完性を模索する必要に迫られるだろう。固定インフラは、無線のトラフィックのオフロードやバックホールのためにも、また利用可能な周波数を有効活用するためにも、不可欠である。政策当局は周波数の利用を効率化しようと革新的な免許制度を試験的に導入している。
  • あらゆる産業部門において、企業が成長を押し上げイノベーションを強化するために、ICTとインターネットの導入、利用を増やす可能性が高い。OECD諸国の大半の企業(2014年は雇用者数10人以上の企業の95%)はブロードバンド接続を利用できるが、統合業務ソフトウェアを利用している企業(31%)やクラウド・コンピューティング・サービスを利用している企業(22%)、電子注文システムを導入している企業(21%)は少ない。国家間および大企業と中小企業間の差も依然として大きい。
  • オンライン資金調達プラットフォームや新たな「共有型経済」プラットフォームなど、協働型生産方式に基づく新たなビジネスモデルは、確立された市場における既存の規制に課題を突き付けており、公益を保護しつつイノベーションを可能にするバランスの取れた政策対応が求められている。
  • 個人の利用を増やす余地も大きい。消費者が電子商取引に占める割合は小さく、電子商取引の最大で90%は企業間取引(B2B)である。インターネットが広く普及しているにもかかわらず、特に、電子政府、電子商取引、オンラインバンキングなど、より高い教育水準が求められるものについては、相変わらず利用度に個人差がある。

国家デジタル戦略による経済社会的成長の押し上げ

OECD諸国の政府は、戦略的にデジタル経済を発展させ、その恩恵を拡大するとともに、失業率の削減や格差の是正、脱貧困などの主要課題に対処する必要があることを強く認識している。現在の国家デジタル戦略は、企業の創出や生産性の拡大から公行政、雇用と教育、医療と高齢化、環境、開発に至る様々な問題を対象としている。総じて、政府は、「インターネット政策策定」が一連の整合的な政府横断的政策に依存しているということに気がつきつつある。

  • インフラは、新たなビジネスモデル、電子商取引、新たな協働型の学術社会ネットワークの基盤となるもので、質が高く、誰でも利用でき、低価格でなければならない。
  • デジタル経済における競争は、技術の収斂、電気通信事業者間のビジネスモデルの統合、新規のインターネットプレーヤーなど、いくつもの大きな転換の挑戦を受けており、政府は競争を保護し、人為的な参入障壁を引き下げ、規制の整合性を高める取り組みも行わなければならない。モバイル市場の再編がイノベーションや他の関係者の競争力を削ぐことがないようにしなければならない。
  • 特に政府や企業(中小企業を含む)によるICTのさらなる利用を奨励することが極めて重要である。
  • オンライン・ネットワーク、サービス、アプリケーションなどの信頼性とセキュリティへの信頼を確保するとともに、利用者のプライバシーと消費者の権利が保護されることを保証する必要がある。OECDは政治家と政策当局に対し、デジタルセキュリティとプライバシーリスク管理を別の技術的、法的課題として処理するのではなく、より広範な経済社会的リスク管理の枠組みに統合するよう求めている。サイバーセキュリティ戦略は国家プライバシー戦略によって補完することで、プライバシー問題に対して連携して総体的に取り組むとともに、社会が集合的な公益のために受け入れられる制約を見極めるべきである。
  • ICT関連の教育、訓練、技能再習得を通じて、人々にICTを活用するとともに自身のオンラインの社会経済活動に伴うリスクを管理するための適切な技能を身に付けさせなければならない。それが起業や雇用、ICTによる社会参加(e‑inclusion)につながるものであるべきである。
  • デジタル化は破壊的な影響をもたらす可能性があることを認識することが極めて重要である。政府は労働者の新たなデジタル職種への移行を促進する必要に迫られるだろう。

インターネット・ガバナンス:将来の優先政策

インターネット社会は、インターネット技術資源の監視を米国政府から地球規模の多様な利害関係者の集団へと移行しつつある。2015年9月、国連は、持続可能な開発目標を設定するポスト2015年開発アジェンダを始動させるが、この中にはICTとインターネットへのアクセスを強化して包摂的でグローバルなデジタル経済を創出するようにするという目標 が含まれる可能性が高い。2015年12月には、多様な利害関係者が主導するインターネット・ガバナンス・フォーラム(IGF)の任務が更新される。

このような取り組みの底流には、インターネットの開放性を順守する必要があるという根本的な考え方がある。開放されたプラットフォームとしてのインターネットは企業、市民、政府が偶然イノベーションを行い、アプリケーションやサービスを開発することができる場所であるという概念によって、デジタル経済における数多くのイノベーションが可能になった。しかし近年では、インターネットの開放的で非集中的な構造と越境データの自由な流れによってもたらされる経済社会的な便益が、テリトリアルルーティング、ローカルコンテンツやデータストレージの要件、ネットワークの中立性、多言語ドメイン名の受容、代替ネットワークの創設といった問題に直接的、間接的に影響されるかもしれないという懸念が生じている。

インターネットの開放性の便益とリスクについては、2016年のOECD閣僚理事会において、閣僚その他のハイレベルな利害関係者によって議論されることになっている。この閣僚理事会では、グローバル なインターネット接続、IoT、デジタル経済におけるイノベーションと信頼を育成する需要サイドの取り組み、雇用創出を促進し、デジタル経済の便益を最大化させる上で必要な技能を開発する方法などに関する問題も取り上げられる。

© OECD

本要約はOECDの公式翻訳ではありません。

本要約の転載は、OECDの著作権と原書名を明記することを条件に許可されます。

多言語版要約は、英語とフランス語で発表されたOECD出版物の抄録を 翻訳したものです。

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