1887

OECD Multilingual Summaries

Aligning Policies for a Low-carbon Economy

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10.1787/9789264233294-en

低炭素経済のための政策調整

日本語要約

気候変動に対処するには、世界全体のインフラと技術をかつてない規模で転換する緊急の政策行動が必要である。炭素課金と市場型措置、規制介入、持続可能な低炭素技術におけるイノベーション支援など、中核をなす気候政策を実行する国が増えている。しかし、世界の温室効果ガス排出量は急増しており、気候変動の影響は深刻かつ取り返しがつかないくらいの高い水準にある。

効果的な気候政策を妨げる多くの障害がある。最大の障害の1つは、石炭、石油、天然ガスといった化石燃料が何世紀にもわたって世界の経済発展の原動力となってきたため、既存の政策枠組みや経済的利益が未だに化石燃料や炭素集約度の高い活動に合うように調整されていることである。これが既存の政策枠組みと気候目標の間にズレを生み出し、低炭素社会を目指す投資、消費を行うという選択を阻害している。

本報告書は、低炭素経済への移行に欠かせない分野における気候目標とのズレについて、初めて幅広く診断したものである。具体的には、金融、税制、貿易政策、イノベーション、適応などの政策領域と、電力、都市交通、土地利用という3部門における多くのズレを指摘している。

これらの政策を低炭素経済と連携させることで、気候変動対策を円滑に進めるだけでなく、より環境に配慮した、より回復力のある包摂的な成長を実現するための、幅広い政策改革課題に貢献することができる。その中には累進的な税制、成長志向の長期インフラ投資、大気の浄化、健康の増進、エネルギー供給の多様化などを支援するエネルギーと輸送システムなどが含まれる。

気候と成長を改善するための政策調整の改善

持続可能な低炭素投資、金融の強化 新規のインフラ投資によって経済発展を促進しつつ、気候変動という課題への取り組めるという、緊急かつ絶好の機会が生まれている。低炭素への転換に要する追加的な短期コストは、インフラ全体に要する資金のごく一部にすぎない。資金は不足しているわけではないが、新たな資金源を活用する必要がある。安定した資金は、低炭素を含め、どのような投資にとっても前提条件である。しかし、金融規制は思わぬ形で長期資金の供給を制限することになりかねない。金融部門に関する既存のルールの潜在的影響に対処すれば、低炭素インフラへの投資を引き出すことができる。政府が温室効果ガス集約度の高い活動への投資に対する支援を再考し、気候目標を政府調達や政府開発援助の主流に据えれば、公的な資金と投資によって低炭素への移行を拡大することができる。

エネルギーのみならず、税制にも注目すべき 化石燃料の生産と使用を優遇する助成と租税支出は、低炭素イノベーションを鈍化させる。しかし、現在の低い石油価格も改革への好機となっている。他の税金や税引当金(財産税や様々な法人所得税引当金)についても、炭素集約度の高い選択を奨励する可能性があるので、子細に検討してみる価値がある。例えば、OECD諸国の場合、社用車の税制措置がCO2排出量の増加を後押ししている。政府は低炭素への移行が税収に及ぼす影響を予測する必要もある。

大規模な低炭素イノベーションの加速 野心的な気候政策手段の中核に政府が明確かつ信頼に足る形で関与することは、低炭素イノベーションを加速する上で重要である。低炭素への移行は、イノベーションや起業のブーム、技能と労働力の並行的転換を牽引することができるし、すでに牽引している場合もある。低炭素への移行のためのイノベーションとは、新企業の創出、旧企業の再構築や退出、誕生まもない技術や企業モデルの台頭、イノベーションが幅広く採用されるための適切な支援枠組みなどを意味する。そのためには、教育、訓練、労働市場政策などを通じて潜在的な技能格差に対処する必要がある。

環境に優しい国際貿易と国内意思決定の促進 国際貿易体制自体は、政府が野心的な気候政策を追求することを妨げないが、一部の国際貿易障壁は気候目標を害する可能性がある。例えば、輸入関税は依然として低炭素への移行に必要とされるいくつかの技術の貿易に罰則を科している。現在交渉中の環境財協定は、その成果の1つとして、気候変動緩和への取り組みにかかるコストの削減に資するだろう。したがって、低炭素技術の国内メーカーを優遇することにより環境に優しい成長を促進している多くの国々には配慮が求められる。このような措置が国際貿易を制限するならば、投資全体や持続可能な技術の導入が阻害されることになる。

電力の脱炭素化 電力は、エネルギーシステムの脱炭素化を成功させる上で中心的な位置を占めている。しかし、電力市場を規制緩和しても、膨大な資本コストがかかる低炭素技術への投資に必要とされる長期的な価格シグナルを送ることにはならない。低炭素という解決策への競争的かつタイムリーな投資を確保するには、長期的な供給合意などの新たな市場取り決めや頑健かつ安定的なCO2価格シグナルが必要とされる。競争の強化を検討している国と地域が規制制度を持っているならば、低炭素技術への投資を阻害するのではなく奨励するような市場取り決めを採用する必要がある。

持続可能な都市交通の選択 現在の輸送システムは化石燃料に大きく依存しており、特に都市部において、極めて高い環境負荷(気候変動、騒音、大気汚染など)を課している。エネルギー効率がより高く、炭素集約度がより低い交通手段を提供する政策介入が必要である。多くの都市では、土地利用と輸送計画の調整が適切になされておらず、それが自家用車の利用増につながっている。 あらゆるレベルの政府における政策行動の調整や、利害関係者間の調整などを行えば、低炭素交通手段の提供を大いに推進することができる。国家的な枠組みや法制を見直すことで、地方政府に低炭素の選択をするためのより多くの財政的、政治的余地を与えることができる。

持続可能な土地利用のための奨励策の強化 森林伐採の削減、劣化した土地の修復、低炭素農業の実践、土壌や森林における炭素隔離の強化など、持続可能な土地管理慣行は、増加する食料需要に応えつつ、温室効果ガス排出量の削減に大きく貢献することができる。また、生態系を保護することにより、気候変動に対する経済の回復力を高めることもできる。そのためには、気候変動の緩和、適応、農業、食料安全保障、森林、環境政策の間の縦割りを壊す統合的アプローチが必要とされる。より具体的には、各国は環境に有害な農業助成を撤廃する取り組みを推進し、生態系サービスを評価し、森林を保護し、食品廃棄物を最小限に抑えることができる。

低炭素への移行への関与

すべての政府省庁が所管政策分野で低炭素への移行との重要なズレを特定できれば、気候政策はより大きな効果を上げることができる。したがって、野心的な気候変動対策計画には、政府横断的な政策決定に向けた新たなアプローチが必要となる。

国家レベルを越えて、国際的な政策調整を改善することも、効果を高め、競争を歪めるという懸念を緩和できる。温室効果ガスの削減に関する国際的取り決めは、こうした方向への力強いシグナルを送ることになるだろう。

© OECD

本要約はOECDの公式翻訳ではありません。

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© OECD/IEA/NEA/ITF (2015), Aligning Policies for a Low-carbon Economy, OECD Publishing.
doi: 10.1787/9789264233294-en

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