1887

OECD Multilingual Summaries

OECD Employment Outlook 2014

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OECD雇用アウトルック2014

日本語要約

OECD地域の労働市場の回復はまだ道半ば

多くのOECD諸国では、雇用の伸びが回復しているにもかかわらず、失業者数は依然として危機前の水準を上回っている。2014年後半と2015年については、失業者数が若干減少すると見込まれている。一部の国では、失業者数の高止まりは、構造的な失業者数の増加と考えられており、特に長期失業者の間で人材の喪失や労働意欲の喪失につながっているため、経済成長が持ち直しても自動的に減少に転じない。OECD地域全体で、2013年第4四半期には、失業期間が12か月を上回る失業者数は1,720万人(失業者の3人に1人以上)と、2007年の水準からほぼ2倍になっている。こうした状況を考えると、回復が力強さに欠ける国は引き続き需要の回復を主要な政策目標に据え、それと同時に構造的失業対策を強化すべきである。求職の際に大きな障害に直面しやすく、求職活動を辞めてしまう可能性が高い長期失業者向けの雇用・訓練策に優先的に取り組むべきである。

実質賃金の伸びは大幅に鈍化

雇用者の多くも、危機のために実質賃金の伸びが鈍化しているか、マイナスにすら転じる経験をしている。多くのOECD諸国では、 失業者数が増え続けていることが、実質賃金の伸びを大幅に抑えている。多くの国、特にユーロ圏では、これが単位労働コストを抑え、ひいては対外競争力を強める助けになっている。特にインフレ率が低いことを考えると、さらなる賃金調整をしようとすると、痛みを伴う賃金カットが必要となり、ワーキングプアが増える可能性がある。競争力、成長、雇用創出を促進するにはさまざまな政策が必要とされる。経済回復を促進する健全なマクロ経済政策に加えて、財・サービス市場における競争を強化する改革、離職者の他業種への転職支援、低賃金労働者の所得底上げなどの政策が必要である。

雇用の質の向上を促進すべき

労働市場のパフォーマンスについては、雇用機会の数と質の両面から評価すべきである。すなわち、政策が追求すべきなのは、雇用の増加とその質の向上である。雇用の質を測る新たな概念・運用枠組みが所得の水準と分布、雇用の安定、労働環境の質という3つの側面から構築されている。これらの側面のいずれについても国により大きな差があるが、雇用の質と雇用の量の間に大きなトレードオフ関係はないと思われる。両方ともうまくいっている国もあるからである。また、雇用の質は国内の社会経済的集団の間でも大きな差がある。若年層、低技能労働者、一時雇用者は多くの点で不利な状況に置かれていると思われる。これに対し、高技能労働者は、雇用の機会により多く恵まれるだけでなく、最も質の良い雇用にも恵まれる。所得の水準と分布は、成長促進策の役割、教育の受けやすさと質、賃金制度(最低賃金や団体交渉権など)、租税・給付制度の制度設計などに左右される。雇用の安定は、雇用保障、失業保障制度(失業給付と解雇手当)、積極的労働市場政策などの相互作用によって決まる。労働環境の質は、労働健康問題を防止する労働安全衛生規則の実効性ばかりでなく、社会対話や雇用主の社会的責任の程度にもよるところが大きい。

一時労働への過度の依存は個人と経済の損失

非正規雇用、つまり常時雇用や無期限の契約という恩恵を受けないあらゆる形態の雇用は、企業に経済情勢の変化に合わせて従業員数を調整するという柔軟な対応を可能にする。また、この種の契約に伴う柔軟性を希望する労働者にとっては、自主的な選択ができるということでもある。しかし、非正規契約が広がると、公平性と効率性の両者に悪影響を及ぼす可能性がある。非正規契約の労働者はしばしば、正規契約の労働者より雇用不安が高まる。企業も非正規労働者にはあまり投資しない場合が多く、ひいてはそれが非正規労働者の生産性の低下や人材開発面の遅れに繋がる可能性がある。世界金融危機に先立つ20年間に、非正規労働は多くの国で拡大した。政府が、主として正規契約に関する規制には比較的厳しい条件を残したまま、非正規契約に関する規制を緩和することにより、労働市場の柔軟性を高めようとしたからである。正規労働者と非正規労働者の雇用格差を軽減する政策的な選択肢として、例えば、常時雇用者の解雇規制を緩和しつつ、有期契約の利用規制を厳格化することなどが考えられる。将来的には、単一の、あるいは統合的な契約を導入すれば、あらゆる契約の解雇費用を一本化することもできる。これらの選択肢はいずれも実行が極めて難しいものであり、効果を発揮するには補完的な改革が必要となる。

早期の労働市場成果と中長期的成果のためには、資格と技能が重要

OECDの「国際成人技能調査」は、学歴とさまざまな技能が16~29歳の若年層の、無就学・無就労のリスクと就労する場合の時間給水準という2つの主要な労働市場成果及ぼす影響について、新たな知見を提供する。この結果は、高学歴化を促進する重要性ばかりでなく、読み書き計算と問題解決力を高めたり、研究分野を選択する際に若者に提供される情報を改善したりする重要性も裏付けている。就労経験も初期の賃金や全体的な技能によい影響を与える。それでも、労働と勉学を両立させていると思われる若者がほとんどおらず、就労学生の大半が、職業教育・訓練(VET)課程や実習などの就労経験を含む正規プログラム外で就労している国は少なくない。これは、学生を労働市場にもっと親しませるには、VETや実習制度の労働モジュールを導入・拡大するだけでなく、全ての学生がより手軽に就労経験を積めるようにする措置も強化すべきである、ということを示唆している。こうした措置としては、企業がパートタイム労働者を雇い入れる上での障壁を撤廃したり、学生が一定時間を限度に就労することへの税制優遇措置を導入したりすることなどが考えられる。

© OECD

本要約はOECDの公式翻訳ではありません。

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© OECD (2014), OECD Employment Outlook 2014, OECD Publishing.
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